Q&Aシリーズ『イスラームとは?』
「イスラームとは何かよく知らないし、ムスリムがどんな人たちか、考えてみたらぜんぜん知らない」という皆さんのために、わかりやすく解説をまとめたセクションです。イスラームの教えについて、簡単なQ&A形式で知ることができるようになっています。
イスラームの教え
「ムスリム(イスラーム教徒)たちは何を信じているのですか?」
ムスリムは、唯一無二、比較できない、万物の創造者、万有の主であるアッラーを信じます。その主に創造された天使、人類へ天啓を伝えた預言者たち、人々の行為が裁かれる最後の審判の日、主の意思による天命を信じます。ムスリムとなるには、「唯一神アッラーの外に神はなく、ムハンマドはその使徒であります」と信じて、証言します。
「イスラームとキリスト教とユダヤ教はどのような関係にあるのですか?」
イスラームとキリスト教、ユダヤ教は同じ源から生まれた宗教です。いずれも唯一神を信じ、アダムからアブラハムへと続く預言者たちを信じています。現在のサウジアラビア王国のマッカにあるカアバ神殿は、それらの預言者の一人であるアブラハムによって建立されたものであると伝えられています。
「イスラームはどのようにして世界に広まっていったのですか?」
預言者であり使徒であったムハンマドがイスラームを伝え始めた当初、マッカの住人たちの大半はこの教えを受け入れようとはしませんでした。しかし、唯一神であるアッラーのみを崇拝するという簡潔な教理に共鳴する人は次第に増えてゆき、預言者ムハンマドの生存中から、マッカの住人を始めとする多くの人々がイスラームを受け入れました。やがてイスラームの教えはアジア、アフリカ、ヨーロッパへと広がっていったです。
預言者ムハンマド
ムハンマドとはどのような人でしたか?
日本では昔「マホメット」という名前で呼ばれていましたが、今ではアラビア語における原音「ムハンマド」(=「讃えられた人、賞賛された人」)が使われるようになりました。
西暦570年にメッカ(アラビア語での正式な発音は「マッカ」)において、名門クライシュ族の一人として誕生しました。彼は幼い頃から誠実で「正直者」と呼ばれており、その高潔さは人々の間に知られていました。
「ムハンマドはどのようにしてアッラーの使徒、預言者となったのですか?」
キャラバンに加わったり、中継貿易に携わっていた彼は、人々からの信頼を受けていました。40歳になった時、彼のもとにアッラーの啓示をたずさえた天使ジブリール(=ガブリエル)が降り立ちました。天使はムハンマドに「読め」と命じ、彼が反復して読んだ一文がイスラーム最初の啓示となりました。このアッラーからの啓示はクルアーンと呼ばれ、23年間にわたり預言者ムハンマドに下されました。
イスラームの実践
「イスラームの実践における「五柱」とは何ですか?」
イスラームでは、ムスリムの生活の礎となる行いを「五柱」(礎となる五本の柱)と呼んで重視しています。ここでいう五柱とは以下の5つを指します。
1)唯一神アッラーと預言者を信じます、という信仰告白・証言
2)義務として定められた1日5回の礼拝
3)一定額の喜捨をおこなうこと
4)ラマダーン月に断食すること(出来ない理由がある人は免除されます)
5)余裕と能力があり、それが可能であればマッカへ巡礼すること
【解説と補足】
1)信仰告白
「アッラーのほかには神はなし ムハンマドはアッラーの使徒である」と心から信じて唱えることをいいます
2)礼拝
暁、正午、午後3時前後、日没時、夜の5回、義務の礼拝を行います。礼拝の時間が来ると、声による呼びかけ「アザーン」が行われます。規定の時間が来てもすぐさま礼拝できなくとも、少し遅れて礼拝を済ませることが可能です。モスクに限らず、どこで礼拝しても良いことになっています。また、集団で礼拝できない時には、一人だけで礼拝することも可能です。
3)喜捨
アラビア語では「ザカート」といい、貧しい人などこれを必要とする人たちに分配されることが決められています。ザカートを自分の収入・財産に応じて支払うことが義務となっています。ムスリムたちはこのザカートを通じて助け合い、お互いを大事に思いやる精神を育みます。
4)断食
ムスリムにとって義務とされているのは、ラマダーン月(ヒジュラ暦9月)に行う断食です。実際には食事を断つ他に、性的な欲望を断つことも含まれています。また、「斎戒」という日本語を訳にあてる場合もあります。断食は暁の礼拝前(つまり、日の出前になります)から日没時まで行われます。しばしばこの断食が唾も飲めない苦行であると誤解されがちですが、ムスリムは断食を通じてアッラーへの信仰を深めるとともに、人々と日没後の食事を楽しみ、幸せに満ち充実した1ヶ月を送ります。このラマダーンを何ヶ月も前から楽しみにしている人も多いのです。
5)巡礼
イスラームの聖地マッカへ巡礼することは、健康に恵まれ経済的に余裕があるものにとって、一生に一度行うことが義務とされています。巡礼(ハッジ)はイスラームの暦であるヒジュラ暦の12月に行われ、世界中から巡礼者が訪れます。ムスリムたちはみなこの巡礼を行える日が来ることを願いながら毎日を過ごしてます。
イスラームとムスリム
「イスラームにおける人権について教えてください。」
ムスリム社会では、各自の生命・名誉・所有の権利は非常に大切なものと考えられています。また、信仰の上では人種による差別は一切行われず、信徒たちは神のもとで平等な存在とされます。人間の平等性が説かれる一方で、女性・子供、貧困者、孤児らを思いやり、彼らに必要な保護を与えることが大切であるとされています。
「イスラームと女性の地位について教えてください。」
クルアーンを通じて、アッラーは男性も女性も神の前では平等であると伝えています。また、イスラームでは女性の財産所有権を完全に認めるなど、非常に大きな敬意と尊敬を女性に向けています。
預言者ムハンマドは「信徒の中で最も優れた者とは、妻に親切を尽くす者である」と語られており、夫が妻に敬意を表し、大事にすることをすすめています。また、「天国は母たちの足もとにある」という言葉は有名で、ムスリム社会において母たちは子供たちから尊敬、全幅の信頼、惜しみない愛情を受けています。
イスラームと他宗教
「イスラームは他の宗教にも寛容なのですか?」
はい。クルアーンを通じてアッラーは宗教に強制があってはならないと伝えられました。過去の歴史を見ても、イスラーム世界ではユダヤ教徒やキリスト教徒たちとの共存がなされてきました。
「ムスリムはイエス・キリストのことをどのように考えているのですか?」
ムスリムは、イエスを尊敬しています。イスラームでは、人類に使わされた偉大な預言者たちの一人であると認めているのです。
イスラームと世界の関係
「イスラームがしばしば誤解されがちなのはどうしてですか?」
現代の日本社会において、イスラームはエキゾチックなものとして見られず、とかく誤解されがちです。これは、現代の西欧社会において宗教が本来の力を失っていることとも関係があると言えるかもしれません。しかし、イスラームは現代に至るまでムスリムにとって生活の基本であり続けてきました。聖と俗の区別もないため、政教分離を掲げる西洋化された社会から見ると大きく違うものに見えます。しかし、イスラーム社会にはそうした社会とは異なる社会・政治のシステムがあり、違った形で機能しているのです。
「イスラームでは戦争のことをどのようにとらえていますか?」
イスラームでは、単なる侵略や私利私欲のための戦争は許されません。戦闘行為が許されるのは、防衛の手段として戦う場合だけです。
アラブ イスラーム学院
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